緊急地震速報の音はなぜ、あんなに怖い音なの?
今日はこんな疑問を解消します。
緊急地震速報の警告音
まずは、音を聞いてみてください。
みなさん一度は耳にしたことがある、この音について今回は解説します。
緊急地震速報の音の作曲者
まず、緊急地震速報の音にも作曲者がいます。
作曲者は「
この方は映画「ゴジラ」の音楽を作曲した伊福部昭さんの甥っ子です。
そのため、緊急地震速報の音は、映画ゴジラの音楽から来ていると噂がTwitterなどでも流れたことがあるそうですが、ゴジラの音楽とは直接関係ありません。
伊福部さんがNHKからチャイム制作の依頼を受けた際、5つの条件がありました。
- 注意を喚起させる音であること
- すぐに行動したくなる音であること
- 極度に不快でも快適でもなく、明るくも暗くもないこと
- 既存の警報音、チャイム音とも異なること
- できるだけ多くの聴覚障害者にも聞こえること
これらの条件をもとにチャイムを分析してみると、緊急地震速報がなぜこの音になったかがわかるでしょう。
①注意を喚起させる音であること
楽譜でみるとこのような音になっています。
大きく2つのコードから構成されていますが、素早く駆け上がるように演奏されています。
このように急激にピッチが上がる音は注意を喚起する効果があります。この効果はパトカーや救急車のサイレンでも利用されています。
また赤ちゃんの鳴き声の抑揚が大きいのも、保護してくれる人の注意を引くためだと言われています。
②すぐに行動したくなる音であること
まず、1つ目の条件は「すぐに行動したくなる音であること」
譜面からは一見複雑に見えますが、1つ目のコードを
このように半音ずつ吊り上がった音は、
この効果を使用した有名な警告音があります。
スーパーマリオブラザーズの時間切れ警告音です。
このコードは1つ目の音から3回も半音上がってくるので、急ぐように促すというより、
緊急地震速報はそこまで人を焦らせてはいけないので、1回だけ半音上げるだけにとどめているのかと思われます。
③極度に不快でも快適でもなく、明るくも暗くもないこと
次に「極度に不快でも快適でもなく、明るくも暗くもないこと」について分析してみます。
- 【C7(#9)/G】Cセブンス#ナインス・オンG
- 【C#7(#9)/G#】C#セブンス#ナインス・オンG#
先ほど解説したように、この2つのコードは半音ずらしただけなので、半音ずれただけの同じ種類のコードです。
まず「セブンス#ナインス」というコードに注目します。
このコードの中にはトライトーンという不安を感じさせる要因になる構成が組み込まれています。
ここで試しに
トライトーンを無くしたことによって
明るいコードと暗いコード
コードというのは明るいメジャーと、暗いマイナーに分けることができます。
- メジャーコード(明るい)
- マイナーコード(暗い)
- その他
このように分類されます。
メジャーコードの3度の音が半音下がることで、マイナーコードになります。
【基礎的なコード理論】メジャーコードとマイナーコードを完璧に理解できる記事
緊急地震速報のコードを見てみると、明るい要素の「ミ」と暗い要素の「ミ♭」が一つのコードの中に混在しています。
つまり、緊急地震速報のコード「C7(#9)/G」は、
ちなみのメジャーとマイナーの要素を両方持つことができるコードは「7(#9)」ただ一つです。
- メジャーの明るい要素
- マイナーの暗い要素
- トライトーン
「7(#9)」というコードで、これらの要素を同時に表現しようとしたわけですね。
④既存の警報音、チャイム音とも異なること
そして4つ目の条件「既存の警報音、チャイム音とも異なること」を解説します。
コードの形を観察すると、これまでのチャイム音と異なる点が見えてきます。それは最後についてる「
「/」この記号がついたコードは転回形といい、最低音を変えるというはたらきを持っています。
- C7(#9)/G→「G(ソ)」が一番低い音
- C#7(#9)/G#→「G#(ソ#)」が一番低い音
ということを示します。
このように順番を並び替えられた形を「第二転回形」と呼びます。
ましてや「7#9」という珍しいコードを第二転回形にしているため、日常ではなかなか耳にしない音として印象に残る響きになっているのです。
珍しいコードを珍しい形で鳴らすことで、既存の警報音と差別化を図り、聞いたことがない音を作ろうとしたことが伺えます。
転回形についてはこちらの記事で解説しています。
転回形ってなに?転回形とオンコード(分数コード)の違いについても解説します。
⑤できるだけ多くの聴覚障害者にも聞こえること
最後の条件は「できるだけ多くの聴覚障害者にも聞こえること」です。
- 低音障害型(低音が聞こえにくい)
- 高音障害型(高音が聞こえにくい)
聴覚障害にはこのようなさまざまなケースがあります。
条件1でお伝えした通り、この警告音は素早く下から上へ音が移動しているため、広い音域をカバーしています。また明るく抜けない音色を使用しているため、スピーカーであっても抜けない音質で流すことができます。
このチャイムが初めて使用されたのは2006年、テレビ機能付き携帯電話が出始めたのも同時期です。もしかすると携帯電話のような小さなスピーカーで鳴らしても聞こえることを想定していたのかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたか。
今回の緊急地震速報のような効果音1つとっても、作曲者が明確な意図を持って音をデザインしています。
緊急地震速報のチャイムが怖いと思っていた人もその成り立ちや仕組みをわかっていただけたのであれば嬉しいです。